【分散投資が機能したマーケット】~歴史的な下落を演じた日本株の教訓~

ここまでのマーケットをプレイバックしてみたいと思います

『2024年前半、日経平均史上最高値更新』

 2024年上半期、日本株は急速に上昇し、特に日経平均株価は7月11日に42,224円の史上最高値を記録しました。外国人投資家が日本市場に対して強い買い意欲を示し、積極的に資金を投入したことが大きな上昇要因でした。
また、2024年初頭からドル/円は急速に円安が進行し、7月には162円に達しました。この円安により輸出関連企業の業績改善が期待されるなど、円安株高のポジションが拡大し、上昇を加速させることになったわけです。
更に、日銀は引き続き実質的に金融緩和政策を維持しており、株式市場を支える要因となっていました。

ところが...

『2024年7月以降の暴落と円高転換』

 7月11日に42,224円の高値をつけた日経平均は、その後下落基調となり、8月5日には日本株は史上最大の下げ幅(4451円)を記録し、31,458円まで下落しました。高値から約1か月でおよそ1万円も下落する大暴落を演じました。この間、株式売買シェアの約7割を占めるという外国人投資家も大きく売り越しています。
為替もドル/円が7月に162円まで進んだ円安が円高に転換し、8月には140円水準へと急速かつ大幅な円高となりました。これは投機筋による一気加勢の円ショート(売り)ポジションの巻き戻しが大きな要因でした。その引き金となったのは、日銀総裁のタカ派的な発言、加えて財務省の円買い介入でした。
この日本株の暴落と急速な円高は、日米の金融政策の変化や米国景気後退懸念の再燃を受けて、これまで積みあがっていた円安株高のポジションが一斉に巻き戻された結果引き起こされたということです。

 ※この暴落の背景は、YouTube動画で詳しく解説しています。→こちら
ご参考までに、是非ご視聴ください。

 『半値戻しとその後の展開』

 こうした過度な動きはほどなく一巡し、日本株は8月16日には、日経平均株価が36,791円に達し、一時的に半値戻しを達成しました。これは、7月11日の42,224円から8月5日の31,458円への下落幅をほぼ半分戻した水準です。まだしばらくは、上下変動の大きな展開が想定されますが、過去の暴落時のその後の動きを見ても、約2か月程度で回復基調になっていることからも、現在は割安資産への投資の好機とも言えるかもしれません。

 『この間の米国市場は?』

 米国市場においては、金利低下を過度に織り込んで上昇していたハイテクグロース株が一気に逆回転の暴落を演じました。特にエヌビディアなどが象徴的でしたが半導体関連の下落は、実態以上でした。AIバブルを指摘する声もありますが、現状は極端な割高感は修正されつつある局面と考えられます。今後はバリュー系株式からグロース系株式への資金のシフトも起こりえるかもしれません。一方で、長期金利は低下し、債券価格は上昇しました。債券組入れがリスク管理上機能した局面だったと言えます。

 米国景気後退懸念の見極めや、地勢学リスクにも留意が必要な不透明な環境は継続しています。11月の米国大統領選までは変動率の高い局面が想定されます。現状カマラ氏がトランプ氏より優勢との観測もあり、トランプラリーの巻き戻しもありましたが、どちらが大統領になるかは問わず、過去においては、大統領選挙後は新政権への期待感(ハネムーンラリー)、また不透明感が一時的払拭されることから、株式にはポジティブな状況となっています。

『適切なアセットアロケーションで分散投資を!』

「2024年は、アセットアロケーションの有効性が復権する年になる」と、前回コラムで指摘しました。
これまで見てきたように、急激な市場変動に対して、アセットアロケーションがいかに重要かを再認識された方も多いと思います。
特に債券へのポジションは、分散効果を発揮している局面です。株式市場が大きく変動する中、米国債などの債券市場は利下げを織り込みつつ、比較的堅調に推移してきており、安全資産としての役割を果たしています。機関投資家は債券市場へ資金をシフトさせました。
また、日本株の今後の動向は、日米の金融政策のスタンスや円高の行方に大きく依存します。
米国は9月FOMCにおいて、0.5%の利下げ(通常の0.25% も2倍の金融緩和)を決定しました。実に4年半ぶりの利下げにようやく転換しました。失業率など雇用統計が悪化の兆しを示す中、景気をソフトランディングさせるための予防的措置ですが、今後の利下げペースには注目です。一方日銀も金融政策の変更を示唆する中で、今後の具体的な動きや、総裁発言などが、マーケットに影響を与えるとういうことには留意が必要です。今後も外国人投資家の動向や為替市場の急激な変動が市場に大きな影響を与える可能性があるということです。

 引き続き、リスクヘッジとして債券を含む適切なアセットアロケーションによる分散投資を活用したポートフォリオを戦略が有効になると考えています。